retireSakiの日記

たぶん引退した?ソフトウエアエンジニアのブログ

GPS衛星測位システムで地図上の誤差が何故多いのか?!その理由を垣間みる

 GPS衛星測位は準天頂衛星「みちびき」によって、測位精度が向上と言われています。
このメディアの情報には大きな誤解を生む内容が含まれています。
測位点によっては大きく精度が異なっています。
「みちびき」衛星を使っていない従来のGPS衛星測位システムでも測位点により誤差が違ってきます。

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 そもそもGPS衛星測位システムとはどういうものなのでしょう?!簡単に説明します。

  衛星測位によって得られる情報は、自分の3次元空間座標である(x,y,z)と時刻の情報です。
衛星測位とは、4つの衛星からの電波を受信することで、受信機と人工衛星との距離を測定(計算)します、さらにこの測距データをもとに位置と時刻を計算します。

GPS衛星との距離=電波伝播時間×電波の速度

電波伝播時間=受信機の時刻ー衛星からの受信データ内の時刻の情報
電波の速度=光の速度=299,792,458m/秒

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 それぞれの衛星との距離内の全ての交差する範囲内が受信者の位置となります。
実際にさらに補完情報を含めることで、「この位置です」という具合に決めているのです。

 計算式から分かるように、わずか1μs(100万分の1秒)の時刻のずれが、300mもの測距誤差となるのですが、これは逆に言えば、それだけの精度が送信側も受信側も必要となります。

 GPS衛星にはセシウム原子時計およびルビジウム原子時計が搭載され、「みちびき」にはルビジウム原子時計が2台搭載されています。
ルビジウム原子時計が搭載されています。

また、GPS衛星や「みちびき」の受信データを使えば、かなり正確な時刻を取得できることを意味しています。

 さて本題の誤差の件ですが、過去に存在した誤差の要因も含め、大きなものを紹介します。

1.受信GPS衛星の数や障害物による誤差

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 図のように、受信できる衛星の数が多ければ多いほど精度は良くなります。
また、上図から判るように、各衛星間の角度が大きいほど精度は向上します。

 電波は障害物で反射する特性があるので、ビルなどからの反射電波が誤差を生みます。

2.演算能力による誤差

 受信機側で計算する数値の桁数が、通常の算術演算では桁不足になるため、それ相応の工夫が必要です。プログラムの最大演算桁数はCPUのビット数とそのビット数に対応した開発言語が必要となります。

 日本国内でGPS衛星を使用するための実証システムを開発した時には、16ビットコンピューターだったので大変でした。さらに当時のカーナビは4ビットや8ビットコンピューターなので、計算誤差はどうしても大きくなりました。

 GPSで使われる地図は 世界測地系ですが、当時は日本測地系の地図を使っていたりしたため、さらに大きな誤差を生みました。
稚内で緯度:約+8秒(約240m)、軽度-14秒(約350m)
東京で緯度:約+12秒(約360m)、軽度-12秒(約300m)
那覇で緯度:約+14秒(約240m)、軽度-7秒(約180m)
違います。

現在は演算能力や測地系に関する誤差はほぼ解消されています。

3.地球の形状による誤差

 肝心なのが、地球は完全な球体ではなく、歪みを持った楕円体であることです。

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日本の最北端は北海道の択捉島で、緯度:45°33′26″で約30.87m/緯度1秒
日本の最南端は東京都の沖ノ鳥島で、緯度:20°25′31″で約30.74 m/緯度1秒
日本最北端と最南端では約0.1m/緯度1秒 以上の誤差があります。
緯度1秒の計算誤差があると、普通の道路の10車線分の誤差があるということです。

[リンク] Wiki「緯度」

 日本測地系ではベッセル楕円体で、世界測地系GRS80楕円体と大きさや中心が違いますが、測地成果2000によりほぼ解消されています。
ベッセル楕円体の扁平率の逆数は 299.152813 、赤道半径は 6377397.155 m
GRS80楕円体の扁平率の逆数は 298.257222101 、赤道半径は 6378137.0 m

なおGPSで用いられる測地系であるWGS84の準拠楕円体は、GRS80とほぼ等しいです。
GRS80楕円体の扁平率の逆数は 298.257223563 、赤道半径は 6378137.0 m

[リンク] Wiki「地球楕円体」

 数学的にも面白いので、興味のある方は調べてみてください (*^.^*)

4.使用する地図による誤差

 地図にはメルカトル図法、正積図法、正角図法、正方位図法、グード図法などありますが、3次元の球体を2次元で完全に表現できないことも誤差となります。
もともと3次元空間を2次元で表現使用等することに塗りがあるのですが(笑)

 国土地理院測地成果2000で、電波星を利用したVLBIやGPSを利用した電子基準点の観測値に基づいて日本中の測量をやり直し、従来の測地基準点成果が持っていた歪み(北海道で約9m、九州で約4m)も解消しています。
さらに、測地成果2011では、東北地方太平洋沖地震による大きな地殻変動に伴い、座標補正を行っています。

ですので、測地成果2000以降の地図を使うことをお勧めします。

[リンク] 国土地理院「測地成果2000」と「測地成果2011」

5.座標系による誤差

 世界測地系はITRF系、WGS系、PZ系の3種類ありますが、測地成果2000ではITRF94座標系を使い位置を表示しています。
米国GPSはWGS系座標のため、変換(計算)結果に (無視できるほどの小さな) 誤差を生みます.

6.その他の誤差

 この他にも、電磁波の伝搬速度、電離層の影響、大気圏の影響などによる遅延等いろいろな要因など小さな誤差が積み重なり、さらに大きな誤差となります。

7.誤差を補正するためのシステム

 現時点の「みちびき」は準天頂軌道衛星 (1,2,4号機)と静止軌道衛星 (3号機)です。
準天頂軌道衛星は、日本から見ると南天と天頂付近を結び8の字を描くような軌道となっています。

また、全国約1300か所に整備した「電子基準点」を補強信号を「みちびき」(4基体制) とともに使うことで、「センチメータ級測位補強サービス」「サブメータ級測位補強サービス」として高精度な位置情報が取得できます。
補強信号は、GNSS(標準的な電波(L1帯)の周波数は1575.42MHz)を使います。
光の速さ約30万km/秒を15億7542万Hzで割ると値が約19cmとなります。
つまり、この単位が「みちびき」システム全体の最高精度となるのです。

 また受信機内臓とGPS衛星内臓の時計との誤差は数学的に修正できるので、精密な時計を受信機に内蔵する必要はありません。

 なんか、初心者の方にも分かりやすくと思っていましたが、かなり専門的なことが多くなってしまいましたね (´・д・`)ゞ
GPS衛星測位システムの開発する場合、これより少しところまで(といっても、計算式までぐらいですが)勉強するのですよ!
場合によっては、国土地理院の方と相談したりもします

 初期のカーナビは2〜5の要因などにより、位置座標が大きくずれました。

GPS衛星の受信に都合の良い見晴らしの良い場所で、新しい地図を使うことが大切です (^o^)v

過去の記憶ベースにし、それ以降に改定された情報などを付加していますので、抜けがあったらごめんなさい m(_ _)m

 

 

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